嘘ヨガ2 ~ お疲れペニスを救済する奇天烈瞑想✡️悪徳バイノーラルビートASMR集 ~ 【瞑想・ノイズ・うっかり射精】
「手で丸を作り、ペニスを囲います」
瞑想は好きだった。
けれど、疲れていると続けるのは難しい。
まとまった集中ができない。
呼吸を整える前に、通知が鳴る。
仕事のこと、明日のこと、まだ返していないメッセージのことが、頭の内側で散らかっている。
それなのに。
行く先々で、なにか丸いものを見るたびに、
頭の中にある手が、勝手に”あの輪”を作ってしまう。
コーヒーの紙コップ、扇風機の中心、他人のメガネ。
半ば強迫的に思い出すので、下を向いて歩くようにしている。
もはや、月の形まで気にするようになっていたのだ。
★
浴室で身体を洗っているとき、
あの姿勢を思い出してしまった。
輪を作る。
囲う。
握らず、こすらず、ただ、そこに形を置く。
「手で丸を作り、ペニスを囲います」
奇天烈瞑想で教わった形のまま指を少し強く押しつけると、
皮膚が張り、そこに、主張が生まれる。
生ぬるい湯の下で行う、ひどく情けない滝行のようだった。
疲れているときほど、奇天烈瞑想のことを考えてしまう。
仕事の合間に、ふいに挟まれる、あの形。
行きたい。
けれど、忙しくて行けない。
集中できないくせに、思い出すことだけはやめられない。
生ぬるいシャワーで全身を濡らしながら、
手で丸を作り、ペニスを囲ってはいるものの、
あのとき体感した強い勃起どころか、
ペニスは大地の方面に、しゅんとうなだれていた。
★
フラストレーションでいっぱいになっていると、
あのヨガ教室から、メッセージが届いた。
「先日の一日体験はいかがでしたか?」
続く文章には、奇天烈瞑想の「自宅実践用パーソナルコース」が始まった、と書かれていた。
なかなか教室に通えない人でも、自分の部屋で、今の身体の状態に合わせて瞑想を続けられるらしい。
音源には、世界情勢、日本の世相、月齢、気圧、そして宇宙の様子が反映されているという。
意味はわからない。
けれど、完全に嘘とも言い切れない。
だって、あのときペニスは、張り裂けるほどに勃起していたのだから。
積んだままの本を、いつか読むつもりで棚に残しておくように。
古いお守りを、捨てられないまま財布に入れておくように。
音源は、再生しなくても、持っているだけで少し効く気がした。
たしかに、一度あの形を覚えてしまえば、
自宅でできるといえば、できる。
美人ヨガ講師の姿を見ながら瞑想できないのは、
自らの怠惰が起こしている、どうしようもない欠落だったが……。
それでも、初心忘れるべからず。
一日体験で見た、あの景色。
あのノイズ。
あの、握らずに耐える時間。
案内の最後には、こう書かれていた。
「ご相談したいことがありましたら、メッセージいただいても構いません」
その言葉に甘えて、ヨガ講師に、ありのままを打ち明けた。
疲れているときほど、思い出してしまうこと。
丸いものを見ると、頭の中で手が輪を作ってしまうこと。
握りたいのに、握ってはいけないと思うと、
かえって、あの形から離れられなくなること。
教室に行きたいのに、行けないこと。
しばらくして、返信が届いた。
「嘘でもいいから、”命令されている”と思えば、身体は自然とそのほうに向くものです」
「どんなことがあっても、握らず、こすらず、ただ囲う」
「奇天烈瞑想の先には、いつも、あなたが信じている空間があります」
……信じている空間。
それは、決まった天候のある空を越えた、宇宙のことだろうか。
それとも、1日体験の夜にした瞑想で見えた、暗がりの先にある”光の円の先”のことだろうか。
★
腹の底が少し空いているときほど、瞑想は深くなる。
満たされていない身体のほうが、入口を見つけやすいのかもしれない。
自分の本能は、追い詰められているときほど、爆発するらしい。
奇天烈瞑想は、
握りたくても、握れない。
こすりたくても、こすれない。
どんなことがあっても、そうしてはならないのだ。
男が持つ生命力を訴えかけるような、あの強い勃起、
そして、苦行を乗り越えた先にある射精は、
快感というより、「奇天烈瞑想を終えられてよかった」という、確かな安堵だ。
奇天烈瞑想をなにかに例えるなら、日時計に近い。
輪のかたちの中心に、ただひとつ立ち上がるもの。
それは、人生が一度しかないことを示す、救済の指針でもあり、
まだ自分が時間の中に立っていることを、強く、訴えかけてくるものだろう。
<収録内容>
奇天烈瞑想 自宅実践用パーソナルコース #01~#08 各3分
#00 奇天烈瞑想焦燥歌
#01 かこい
#02 つきのちから
#03 めいれい
#04 にぎらない
#05 からにする
#06 せつぞく
#07 ひのわ
#08 ささげる
*作品画像とトラック#00はAI生成を使用しています。